キュービック 世一英仁 | (後編)10周年を機にCIを一新!「ヒト・ファースト」の経営理念にたどり着くまで

株式会社キュービック 代表取締役 世一英仁

2016年10月24日で10周年を迎えた株式会社キュービック。10周年を機に経営理念、ミッション、クレド、そして社名やロゴといったコーポレートアイデンティティ(CI)を一新しました。CIという重要なものを、なぜこのタイミングで一新したのか、そのプロセスではどのような困難があったのかなど、同社の世一社長にお伺いしました。

  

ビジネスモデル上の限界?苦しめられた矛盾

  —— ビジョン構築プロジェクトの進行は順調だったのでしょうか。

  顧客にフォーカスしたり、自社の強みにアプローチしたりと、様々なセッションを相当な回数重ねました。しかし、なかなかしっくりいかず、プロジェクトメンバー全員がかなり疲弊していきました。もちろんこのプロジェクトだけではなく、通常業務を同時に進めながらだったため、業務の成績や業務進捗に影響が出てしまうメンバーもいました。

 

 プロジェクトが上手くいかなかった理由はビジネスモデルにあります。先にもお話ししたように、キュービックのビジネスは「webメディア事業」ですから、ユーザーにコンテンツを提供しているメディアとしての側面と、クライアントに広告媒体としての価値を提供しているマーケティング会社としての側面があります。このため、「顧客」が誰なのか、「提供価値」が何なのかを1つに統一することが難しいのです。

 

 また、社内にはユーザーファーストでコンテンツ作りをしているメンバーもいれば、クライアントファーストで広告運用をしているメンバーもいます。それぞれの想いが違うのは当たり前で、この最大公約数を抽出することはほとんど不可能でした。

  

   —— どのようにしてその矛盾を解消していったのですか?

  我々のような広告事業者は、自社の商品・サービスを持たないことがほとんどです。そのため、同じように悩んだであろう広告関連の会社の経営理念やビジョンを徹底的に調べました。しかし、その結果、「顧客のために頑張る」「みんなを幸せにする」など、ふわっとしたものしか出てこなくて、このテーマの難しさを再認識できただけでした。

 

 また、キュービックは複数のメディアを運営しているため、メディアごとの理念は決めやすいものの、全てを統合したコーポレートビジョンを作ることが難しいという点もネックでした。これを解決するため、事業開発会社の代表の方にお話を伺いに行ったりもしました。そこでは、無理にコーポレートビジョンを作ることに固執しなくてもいいというヒントを得ることはできましたが、クリティカルな解決には結びつきませんでした。

 

 そんな中、あるメンバーが「社長はこの会社が5年後、どうなっていたら嫌ですか?」、「メンバーが3年後どうなってたら嬉しいですか?」、「今の事業をどうしたいですか?」、「会社のどこが好きで、どこが嫌いですか?」、「課題はなんですか?」、「何をしている時が一番楽しいですか?」といった質問を僕にぶつけてきました。それは、社長である僕が何を大切に考えて会社経営をしてきたかという、根本に関する問いでした。

 

  原点にかえることによって見えた「ヒト」への強い想い

    —— チームでビジョンを作るということから、経営者の想いという原点にかえろうとしたのですね。そのプロセスではどんな変化があったのでしょうか。

  質問されて気づいたのですが、僕は事業にはこだわりがないみたいです(笑)。基本的に、社員が胸を張って生き生きと働いてくれることは大切ですし、友達や家族に自慢できる会社にしたいと思っています。そして、会社の一番の強みがカルチャーにあると思っているなど、僕自身の興味が基本的に「事業」ではなく「ヒト」に向かっていることがよくわかりました。そこについてはメンバーも違和感なく納得できたようでした。

 

    —— まさに「ヒト・ファースト」の経営理念ですね。ミッションとして掲げられている「ヒト・オリエンテッドなデジタルマーケティング」にはどのように辿り着いたのでしょうか。

 弊社の経営理念は「ヒト・ファースト」とはいっても、単純に「ヒトを大事にしましょう」、「仲良く楽しくやりましょう」というものではありません。実は、事業面における弊社の強みも僕自身のこの「ヒトへの興味・関心」にあることにその時初めて気がつきました。

 

 マーケティングでは数字やデータにどうしても固執しがちです。しかし、弊社のような小さな会社は、分析するための数千万~数億というデータサンプルをそもそも入手することが難しいです。また、膨大なデータを処理するには、時間も費用もそのための専門知識も必要になります。

 

 一方でキュービックの強みは、実際のターゲティングユーザーやクライアントのカスタマーサポート担当に直接インタビューし、ユーザーのインサイト(深層心理)を掘り返してそこにアプローチする技術があることです。そこには数億のサンプルは不要で、せいぜい5~10名程度に話を聞くことができれば、ターゲティングユーザーに刺さるコンテンツを作り上げることは可能なのです。

 

—— データ分析に頼らず、あえてデジタルマーケティングをアナログに行うことは、とてもユニークですね。

 僕は広告という仕事の本質は、「PCやスマートフォンといった“画面”の向こう側にいるヒトを動かすこと」の面白さにあると思っています。数字やデータに固執すると、これが見えなくなってしまう。キュービックでは看護師向けのメディアを作るために、元看護師をwebディレクターとして採用したり、調剤薬局から追い出されるほど薬剤師について観察したりしています(笑)。まずはターゲットユーザーである「ヒト」を知る。この姿勢だけはどこにも負けません。

 

 ここから先の時代は機械学習が進み、AI化も止められないでしょうから、人間がやるべき仕事はデータの分析ではなくなると思うんですよね。機械には読み取れないヒトの微妙なインサイトを拾い上げ、データサンプルが集まるよりも早くPDCAを回していかないと、この世界のヒトに価値はなくなってしまうと思います。

 

 最終的にミッションとして掲げることになったのは、「ヒト・オリエンテッドなデジタルマーケティングでみんなの明日が変わるキッカケを生み出し続ける」。これは経営理念「ヒト・ファースト」の事業部分への現れです。そして、僕らは「暇つぶしのコンテンツ」、「なんとなく知りたいことがわかったという程度の薄い情報」ではなく、メディアを訪れるユーザーに「キッカケ」を与えられるようなコンテンツやストーリーを提供する。これはユーザーの明日を変えることにつながりますし、クライアントにとっては顧客獲得というマーケティング成果にもなり得ます。このようにして、メディアを通じてユーザー・クライアントの双方に価値提供をしていこうという、キュービックの事業をしっかり表現し、方向性を決定づけるミッションが出来上がりました。

 

 日本を代表するインターネット企業へ

 —— 社名も変わりましたね。

  そうですね。キュービックホールディングスから、キュービックに変わりました。キュービックという名前を維持したのは、響きが気に入っていたからというのはもちろんあるのですが(笑)、ユーザー、クライアント、そして社内のメンバーという3方向の「ヒト」と全て同じ距離感で向き合っていこうという想いを込めることができたことが大きいです。

 

 ちなみに、新社名の「キュービック」では英文表記が「CUEBIC」となり、一見余計な「E」が入っています。「CUE」は「キッカケ」をあらわす英単語で、「E」を入れることでミッションを表現しました。また、「BIC」は英語の方言で「中身も含めた大きさ」を表す言葉。「急成長を志向するベンチャー企業に生まれ変わろう」という覚悟がここにこめられています。

 

—— 次の10年で新生キュービックはどこを目指していくのでしょうか。

 今後は得意分野のCVメディア開発、いわゆる媒体価値を高め、広告主の新規顧客獲得につなげるというビジネスモデルをベースとし、ユーザーにより良い生活を提供できるようなサービスをこのメディアに載せていく。そして全メディアで、ユーザーにとってキッカケとなるCVの最大化を目指しつつ、ゆくゆくはこれらのデータを活用した新しいビジネスに展開できたらと考えています。逆にデータに返っていくイメージですね。

 

 冗談半分で始めた業績目標でしたが、今では「1,000億企業を目指す」というビジョンは完全に社内の共通認識となりました。

 

 ただ、年商1,000億円という数字が欲しいわけではありません。IT企業で1,000億円企業といえば、日本を代表する有名企業ばかりです。そこに肩を並べられるような、大きなインパクトを生み出せる会社になるべく、圧倒的な速度で成長していきたいと考えています。

 

世一英仁氏インタビュー、前編記事はこちら 

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